延命治療とは

延命治療とは読んで字のごとくで、死期を引き延ばすことです。代表的な延命治療には、次のようなものがありますが、いずれも働きが弱くなった身体機能を人工的に補う治療です。

 ・人工呼吸器

 ・人工栄養法

 ・人工透析

現在では、終末期に医学的な介入を行わないことが、ご本人にとって楽な場合があることも分かってきています。

こうした知見が社会に広まったこともあり、延命治療をしないで穏やかな最期を過ごしたいとして、延命治療を希望しない方も増えています。

こうした考え方の根幹は、過剰な延命治療を差し控え、本人の望まない死期の引き延ばしを行わないことにあります。これは、あくまで医療において死期の引き延ばしを行わないことで、尊厳死と呼ばれる刑事罰や民事賠償責任の対象外とされます。

一方で、例えば疾病の苦痛から逃れるためなどの目的で、死期を早めることとは全く異なりますので注意が必要です。死期を早めるこうした医療を含む行為は安楽死と呼ばれ、刑事罰や民事賠償責任の対象となります。

尊厳死宣言公正証書とは

延命治療は、患者本人が決めるものという考え方が広まってきています。

これはリビング・ウィルと呼ばれ、患者の意思決定権にもとづいて、意思表明できなくなった場合に備え、事前に行う治療上の指示とされます。

尊厳死宣言公正証書は、リビング・ウィルを公正証書として作成するものです。

公証人が記載内容について法令違反がないか、作成者の身元や、医師などに病状を確認して作成する文書で、証明力が強く信頼性のある尊厳死宣言文書となります。

特に一人暮らしで延命治療を望まない方は、こうした意思表示を残しておくことにより、希望する終末期医療を受けられる可能性が高まります。

尊厳死宣言公正証書に記載する内容としては、一般的には以下のようなものが考えられます。

・病状が完治せず、死期が迫っている状態になった場合は延命治療を拒否する

・家族も尊厳死に同意をしている

・尊厳死を容認した家族や医師に対し、刑事上、民事上の責任を求めない

・苦痛の緩和に関する処置を希望する

・精神が健全な状態にある時に、本人が撤回しない限り、効力は有効である

この内容は、ご本人の希望があれば、公正証書への記載内容は法的・倫理的に問題のない限り、変更が可能です。

尊厳死宣言公正証書の作成の後

尊厳死宣言公正証書を作成した後は、家族や親族あるいは任意後見人などの信頼できる方に尊厳死に関する意思を伝え、尊厳死宣言公正証書を渡しておくことをお勧めします。なぜなら、入院して延命治療に入る前に、担当の医師に尊厳死宣言公正証書を提示して貰う必要があるためです。一旦、延命治療が開始されると、これを中断することは、治療方法にもよりますが困難を伴います。

ただし、尊厳死宣言公正証書を作成しても、尊厳死は法律として明文化されていないため、尊厳死が必ず実現できるとは限りません。しかし医療現場では尊厳死宣言公正証書を提示すると、多くの場合はこれを尊重して貰えるようです。