任意後見契約

任意後見制度は、ご本人(委任者)が、将来判断能力が不十分になったときのために備えて、ご本人を支援する人 (任意後見受任者)との間で、予め支援契約を締結しておくものです。

ただし、ご本人と支援する人との間で契約を締結する訳ですから、ご本人に判断能力があることが、任意後見制度を利用する前提となります。

また、法定後見制度は民法上の制度ですが、任意後見制度は民法の特別法である「任意後見契約に関する法律」に定められた制度になります。

任意後見契約の締結

ご本人(委任者)と任意後見受任者となる人は、予め公正証書により任意後見契約を締結します。

通常は公証役場に赴き作成しますが、ご本人が入院あるいは施設入所されている場合は、公証人に出張を依頼して作成することもできます。

任意後見契約の内容

契約内容は、一般的には以下の内容になります。

身上保護に関する代理権の付与

介護契約、施設入所契約、医療契約の締結や解除などの代理権付与。

財産管理に関する代理権の付与

預貯金の管理、払い戻し、不動産などの重要な財産の処分、遺産分割、賃貸借契約の締結・解除などの代理権付与。

任意後見監督人が選任された時から契約の効力が発生する旨の特約

法定事項となります。

 

代理権付与の範囲については、裁判所所定の代理行為目録を利用することが一般的です。

代理行為目録は、主要な代理行為が分類されリスト化されたものです。ご本人が代理権付与したいと考える項目をチェックすることにより、代理権付与の範囲を決定することができますので、比較的容易に範囲確定を行うことができます。

もちろん、ご本人の意向をもとに代理権目録を新たに作成されても問題ありません。この方式は、自由度が高いですが、記載漏れが発生することもありますので、注意が必要です。

公正証書作成のための必要書類

任意後見契約の公正証書を作成するためには、以下の書類の準備が必要です。

・財産目録(登記証明書や残高証明書等を含む)

・ご本人の戸籍謄本住民票

・各種保険証、福祉手帳、面金手帳等

任意後見人となる資格

任意後見人の資格は法律上の制限はありません。複数の任意後見人も可能です。

行政書士等の専門家が後見人になる場合は、予め月々の報酬等をご本人と決めておき、任意後見契約書に記載しておきます。

任意後見の開始

ご本人の判断能力が不十分になったとき(法定後見制度でいう「補助」相当に該当する程度以上の判断能力)、家庭裁判所に任意後見監督人選任申立てを行います。

任意後見監督人が決定した時点で、任意後見の開始となります。

任意後見開始後の管理体制は以下の通りとなります。

       任意後見の体制

任意後見監督人選任申立てができる人 (申立権者)

申立権者は、ご本人、配偶者、四親等内の親族又は任意後見受任者となります。

但し、ご本人が申立てを行う場合及び本人がすでにその意思表示をすることができない場合を除き、申立てにはご本人の同意が必要になります。

申立てに必要な書類

申し立て書類は、ご本人の住所地を管轄する家庭裁判所に提出します。裁判所によって提出書類が異なる場合がありますが、東京家庭裁判所では以下の書類を提出します。

・申立書

・ご本人の戸籍謄本

・任意後見契約公正証書の写し

・本人の成年後見に関する登記事項証明書

・本人の診断書

・本人の財産に関する資料

・任意後見監督人候補者の住民票

裁判所からは特に指定されてはいませんが、以下の書類も合わせて提出すると誤解を防ぐことができます。

・任意後見受任者事情説明書

・親族関係図

・ご本人の財産目録

・ご本人の収支状況に関する資料

任意後見の開始

任意後見監督人が選任され。任意後見契約が発効すると任意後見受任者は「任意後見人」となり、任意後見監督人に監督を受けることになります。

 

この記事は、ここまでとなります。

※この記事は「任意後見契約の3類型とは」に続きます。