※この記事は「後継ぎ遺贈型の信託とは」の続きです。
家族信託が終了した場合あるいは解除された場合に、残された信託財産はどのようになるのでしょうか。
清算受託者による清算業務
家族信託が終了した場合、受託者はそれ以降「清算受託者」と立場を変えます。
そして以下に掲げる信託の清算業務を行うことになります。
①現務の結了
②信託財産に属する債権の取立ておよび信託債権に係る債務の弁済
③受益債権に係る債務の弁済
④残余財産の給付(残された信託財産の引継ぎを行います)
残余財産は信託契約で指定された者に帰属
残余財産の帰属先は信託契約で定めることができますので、大抵の場合は信託契約で帰属先を指定しておきます。
残余財産の帰属先は、家族信託に指定されている受益者でも良いですし、全く別の人でも構いません。また法人でも構いません。
さらに複数人を帰属先として指定することもできます。信託契約において、残余信託財産のうち、どの財産をどの帰属先へ帰属させるのかを個々に決めておきます。
下図は、家族信託を利用したいわゆる親なき後対策を示したものですが、長男がお世話になった介護施設を帰属先に指定した例になっています。
信託契約で指定がない場合
信託契約において残余財産の帰属先の指定がない場合や、帰属先に指定された人が亡くなったり権利放棄をした場合には、委託者または委託者の相続人などに残余財産が帰属します。
もともと信託財産は、委託者が受託者に対して信託譲渡したものです。そのため、信託契約が残余財産の帰属先を指定していない場合には、もともとの所有者である委託者に信託財産を戻すのが合理的であるという考え方によります。
委託者やその相続人などが不在の場合
信託契約において残余財産の帰属先に関する規定がなく、それに加えて委託者やその相続人などがいない場合には、残余財産は清算受託者に帰属することになります。
この記事は、ここまでになります。
※この記事は「家族信託の終了」に続きます。