はじめに
旦那様、奥様、幼いお子様という3名のご家族からご相談を受けました。
突然、旦那様が亡くなり、遺産分割協書を作成することになったのだが、幼いお子様は名前も書けないのでどうしたら良いのか、というご質問でした。
遺産分割協議書に署名して有効となるのは、成人であり、なおかつ契約能力者となります。
それでは、未成年の方や、契約能力の欠けた方は、どのように遺産分割協議に参加すべきなのでしょうか。
未成年者が相続人にいるケース
(1)成年者と親権者が利益相反の場合
例えば、母親と未成年の子が相続人となる場合ですと、母親と子はそれぞれ遺産を継承する立場となります。
こうした場合に、母親が子の代理人となると、母親が有利となる遺産分割が行われる可能性があるとされます。そのため、こうした場合は母親が子の代理人となることは出来ません。
家庭裁判所に、子の権利を保護するため、母親以外の特別代理人を選任を申請することが必要になります。
(2)未成年者と親権者が利益相反しない場合
親権者が未成年者の法定代理人として遺産分割協議に代理することになります。
例えば、祖父の相続で、父親が以前に死亡しているため未成年者である孫が代襲相続人となった場合です。この場合は、母親は相続人になりませんので、未成年者とは利益相反になりません。
行方不明者が相続人にいるケース
(1)行方不明者の場合
不在者財産管理人を家庭裁判所で選任することになります
しかし、不在者財産管理人は遺産分割協議を代理する権限を持ちませんので、家庭裁判所に対して権限外行為の許可を申請することになります
(2)7年以上生死不明の場合
失踪宣告を家庭裁判所に請求し、認められれば、通常の場合生死不明から7 年経った時点で死亡とみなされます。その死亡擬制の時点が、被相続人の相続より前の場合には、子または兄弟姉妹相続の場合、代襲相続の問題となります。
認知症の人が相続人にいるケース
(1)成年後見制度を利用している場合
①後見人と被後見人が利益相反の場合
これは、後見人が被後見人の親族で、利益相反になる場合などが考えられます。
後見監督人が選任されていれば、後見監督人が被後見人を代理します。
後見監督人が選任されていなければ、特別代理人を家庭裁判所で選任します。
②後見人と被後見人が利益相反していない場合
後見人が被後見人を代理します。
③任意後見制度の場合
任意後見契約の中で、任意後見人に遺産分割協議を代理する権限が与えられていれば、任意後見人が代理をします。ただし、任意後見人と被任意後見人の利益が相反している場合には、任意後見監督人が代理をします。
(2)成年後見制度を利用していない場合
成年後見を利用していないと、相続人の遺産分割協議時の意思能力の問題になります。
相続人に意思能力がないとされた場合には、遺産分割協議は無効となります。
最後に
本記事で説明してきた通り、相続人が不在の場合や能力が不足する場合には、遺産分割協議のために不在者財産管理人、特別代理人、後見人の選任が必要になります。しかし、これには相応の時間と手間がかかります。
また不在者財産管理人、特別代理人、後見人は、代理や後見を行う相続人の法定相続分を十分考慮しなければ職務怠慢などと見做される可能性がありますから、遺産分割協議が円滑に進まない可能性があります。
したがいまして、このような場合は生前対策として遺言や家族信託により遺産分割方法をあらかじめ指定しておくことが重要になります。そうすることで、円滑な相続を実現することができます。
今回の記事は、ここまでになります。