遺産分割協議書
遺言書がない場合は、原則として、遺産分割協議書を作成して、遺産の分割を決定します。
遺産分割協議書とは、相続人全員で遺産分割について協議を行い、合意内容を遺産分割協議書に記載することにより、合意内容を証明するための文書です。
遺産分割協議の必要なケース
遺言書がない場合
遺言書がある場合には、遺言書に記載の通りに遺産分割されますので、原則として遺産分割協議は不要になりますが、遺言書のない場合には遺産分割協議を作成して遺産分割を決定することになります。
遺言と異なる遺産分割を行う場合
遺言がある場合でも、相続人全員の合意により、遺言と異なる内容の遺産分割協議を成立させることができるとされています。
割合的相続させる遺言の場合
割合的相続させる遺言とは、以下のように相続割合を定めた遺言です。
実際に遺産分割をおこなうためには、不動産や預貯金などの遺産を誰がどの割合で取得するかを具体的に決定しなければなりません。その具体的な事項を遺産分割協議書に記載します。
第〇条 遺言者が有する一切の財産は、長女△△△△(昭和△年△月△日生)および次男◇◇◇◇ (昭和◇年◇月◇日生)に2分の1ずつの割合で相続させ。 |
遺言書に不備がある場合
遺言書が、遺産の一部の分割しか記載していない場合には、遺言書に記載のない他の財産については遺産分割協議を行う必要があります。
また、遺言書における分割財産の特定が不十分な場合など、遺言内容に複数の解釈が成り立つ場合にも、遺産分割協議により解釈を明確にしておく必要があります。
遺産分割協議書が必要となるケース
不動産の相続登記
相続財産の中に不動産があり、相続登記が必要な場合には遺産分割協議書の添付が必要になります。
金融機関の解約等
被相続人が資産や株式、有価証券などの資産を金融機関に預けていた場合、これらの資産を金融機関から引き出す際にも遺産分割協議書が必要になります。
民法改正により、一部預貯金等の引き出し制度はできましたが、全額の引き出しには制限があります。
相続税申告
相続税を申告するために遺産分割協議書が必要になります。
遺産分割協議が合意に至らない場合
たとえ1人であれ反対の相続人がいると、遺産分割協議の合意となりません。そうすると、不動産の移転登記も、預貯金の解約もできないことになります。
こうした場合には、時間と費用が掛かりますが、調停や訴訟などにより遺産分割をすることになります。
また実際には、紛争に到らないものの、相続人全員の合意が得られず、遺産分割協議が中断したまま何年も経過することも少なくありません。
速やかな遺産分割を実現するためには、遺言作成が有効ですので、是非、ご検討ください。
※ 本記事は「遺産分割の方法とは」に続きます。
※「遺産分割協議の署名権者は誰になるのか」を参照下さい。