後見人の着任時の仕事

家庭裁判所が後見・保佐・補助の開始の審判が決定した後、後見人・保佐人・補助人がまず取りかかる仕事について説明します。

登記事項証明書の取得

東京法務局から成年後見人の登記事項証明書を取得します。

登記事項証明書は、後見人(保佐人・補助人)の身分を証明するものですから、さまざまな後見人としての活動や手続きに必要不可欠となります。

ご本人に関する情報収集・調査

後見等をすすめるに当たって、まずご本人の現状を把握するための情報収集・調査を行います。

調査対象は以下の通りの内容になります。

  • ご本人の財産に関する情報の収集(不動産、預貯金、株式など)
  • ご本人の健康状態や、受けている介護サービス等の状況の確認
  • 行政官庁に対する調査(後期高齢者健保、介護保険、年金などの状況)

家庭裁判所への資料提出

ご本人に関する情報収集・調査の結果を整理し、以下の書類を作成して家庭裁判所に提出します。

  • 財産目録
  • 年間収支予定表

後見人の日常業務

着任時の資料提出が済んだ後、後見人(補助人・補助人)の日常業務にはどのようなことがあるのでしょうか。

財産管理事務

ご本人の財産の適切な管理・執行を行います。

ここで注意すべきことは、単に出費を抑えることが目的ではないということです。

もちろん、今後の生活を脅かすような大きな出費は慎重な検討が必要ですが、ご本人の生活レベルを維持するための出費や、趣味嗜好を満たすような出費は、生活に支障のない範囲内で行うべきでしょう。後見人がついたとはいえ、ご本人はあくまで個人として尊重されるべき存在なのですから。

通帳記帳による入出金のチェックと必要な費用の支払い

入金および出金の管理を行い、収支を管理します。支出管理はもちろんですが、入金についても滞ることのないように注意します。

本人所有不動産の管理

ご本人の居住されている家屋の修繕や、バリアフリー化のための増改築なども後見人の職務となります。また、ご本人が施設入所された場合は、不在となった自宅の定期的な見回りや、木立や雑草除去などの管理も行います。

不動産の売却

入院費や施設入居費用に充てるため、ご本人名義の不動産の売却が必要になる場合があります。そうしたときには、家庭裁判所の許可を得て、不動産の売却を行います。

遺産分割協議・相続放棄など

ご本人が不利益を被らないように手続きを行います。

身上監護事務

身上監護として日常的に行われていることとして、以下のようなものがあります。

  • 治療入院などに関して病院と契約・諸手続き
  • 健康診断などの受診手続き
  • 住居の確保(賃貸借契約など)
  • 施設の入退所などの手続き
  • 施設・病院などの処遇を監視し、本人に不利益がある場合は改善を求める
  • 要介護認定や更新の手続き
  • 介護サービス事業者とサービス契約の締結
  • 介護サービスの内容が契約の通りか確認し、異なるときは改善を求める
  • 教育やリハビリに関する契約を締結
  • ご本人を定期的に訪問して、状況に変わりがないか見守りを行う

ただし、介護・看護等などで実際に手を動かす作業(事実行為といいます)は後見人としての職務には含まれません。後見人の仕事は、必要とする最適な介護・看護サービスを選定し、契約を締結することにあります。

ご本人の親族が近隣におられない場合に、入院時に病院から後見人に対して医療行為に対する同意を求められることがあります。しかしながら、後見人には医療同意権はありませんので、病院との調整が必要となる場合があります。

これは施設入所のときの身元保証人等についても同様です。

家庭裁判所への報告

後見人(保佐人・補助人)の事務を監督するため、家庭裁判所はいつでも後見人に対し報告を求めることができます。

家庭裁判所から報告を求められたときは、後見人は指示にしたがって報告書や財産目録、収支状況報告書など、必要とされる資料を提出しなければなりません。

また後見人は重要な財産の処分や遺産分割、相続放棄など財産管理の方針を大きく変更するときには、家庭裁判所に報告をしなければなりません。これは療養看護の方針を変更する場合も同様です。