※本記事は「家族信託組成の手順とは ①」の続きです。

家族信託組成の手順

家族信託の組成の手順は、概ね下図の通りとなります。

本記事では、下図の④から⑥までをご説明していきます。

信託不動産の登記

信託契約書を元にして、対象不動産を委託者から受託者へ名義変更を行います。登記目的は「所有権移転及び信託」となります。

登記原因証明情報として信託契約書そのものを利用することもできますが、信託契約書そのものを法務局に提出してしまうと、利害関係人は登記簿の附属書類として信託契約書を閲覧できてしまうことになります。また、登記事項として契約書全文が選択されてしまうと、登記事項証明書に記載されて、誰でも閲覧可能になってしまいますので、プライバシー的に問題に問題があります。

そこで、一般的には、信託契約書とは別に登記原因証明情報を作成し、登記を行うことになります。やはり、こうした手続きは専門家の関与が不可欠です。

また、農地は農地法をはじめとする様々な規制がかけられていますので、信託財産にするには手続きが必要になりますので、注意が必要です。

信託口口座の開設

信託契約書を事前相談していた金融機関に持参し、受託者名義の信託口口座を開設します。信託口口座とは、信託契約に基づき、委託者から信託された金銭を受託者が管理するための口座です。

信託法では、受託者は個人財産と信託財産を分別して管理することを求めていますので、こうした分別管理義務を実現するための口座でもあります。

信託口口座は、委託者と受託者の双方の個人財産と切り離して、金銭を管理するための口座ですから、以下の機能を持っていなければなりません。

 ・委託者および受託者双方の債権者が信託口口座の差し押さえができない

 ・委託者および受託者の死亡により口座が凍結しない

信託口口座を謳いながら、こうした機能を有しない口座もありますので、注意が必要です。

信託口口座開設後、委託者の個人口座から信託財産として定めた金額を出金し、信託口口座へ入金することで受託者が信託金融資産として管理することができます。

委託者の代理人であれば、委託者の口座からの出金手続きと、信託口口座への振込みまでの入金手続きを代行することができます。しかし受託者の役割は、信託財産に関する財産管理等を行う者であり、委託者の代理人ではありませんので金銭の入出金の手続きができません。

ですから、信託口口座への入金手続きは、あくまで委託者が行う必要があります。

その他手続き

上場株式・投資信託

証券会社で信託口口座を作成し、上場株式や投資信託も移すことも可能です。ただし、こうした取り扱いのできる証券会社は限定されていますので、そうした証券会社に株式を移管する手続きが必要になります。

収益物件

信託不動産の中に賃貸マンションや賃貸アパートなどの収益物件があるときは、受託者が賃料管理を行うことになります。そのため、賃貸人変更の通知や賃料引落し口座の変更などの作業が発生します。

また、信託不動産が火災保険などに加入していれば、保険会社に連絡をして受託者に名義変更を行います。

 

こうした一連の手続きが完了すると、家族信託は運用のフェーズに入っていきます。

 

※本記事は「家族信託の管理・監督とは」に続きます。