※この記事は「相続税の計算 ④個人納付税額の計算」の続きです。

はじめに

相続税の計算 ④個人納付税額の計算」の中で、相続税計算の最終段階である税額控除(同記事の図中⑳)について説明しました。

本記事は、この税額控除の一つである相続税の「障害者控除」について説明するものです。

障害者の方は、介護支援が必要な場合など、健常者より日常生活に費用がかかることがあります。また、就業が困難な場合など、親御様の財産を頼りにせざるを得ないこともあります。

このような特別な事情があるにもかかわらず、相続人のために残した財産に通常通りに相続税が課されるのことは悪平等になりかねません。そこで、相続人が障害者であるなど一定の条件を満たす場合には、相続税額を控除する制度が設けられています。

控除の対象となる人

障害者控除が受けられるのは、以下の項目すべてに該当する人です。

①相続または遺贈により被相続人の財産を取得したこと

相続税の障害者控除の制度であるため、相続税の対象となる行為を行った人が対象となります。相続人の中に障害者控除の対象となり得る方がいても、相続や遺贈で財産を取得していない場合は、障害者控除は適用できません。

②相続や遺贈で財産を取得したときに日本国内に住所がある人

国外に居住するような非居住者の相続人は、たとえ障害者に該当しても、障害者控除の適用を受けることはできません。障害者控除の対象となるのは、相続や遺贈により財産を取得した時点で日本国内に住所がある人だけです。ただし、一時居住者で、かつ、被相続人が外国人被相続人又は非居住被相続人である場合を除きます。

③相続や遺贈で財産を取得したときに障害者である人

相続税の障害者控除の対象となる障害者は明確な要件が設けられており、その要件に該当しない人は障害者控除の対象になりません。障害者に該当するか否かは相続開始時において判定されるものであり、実際に相続したときや申告するときに判定するものではありません。

④相続や遺贈で財産を取得した人が法定相続人であること。

相続財産を遺贈により取得する人は、法定相続人とは限りません。法定相続人でない人に財産を渡すために、遺言が利用されることが多くあります。しかし、法定相続人でない人が相続財産を取得した場合は、たとえ障害者に該当しても障害者控除の適用は認められません。

控除額の計算

未成年者控除の控除額の計算式は以下の通りで、一般障害者の方と特別障害者の方で異なります。

<一般障害者の控除額の計算式>

 (85歳ー相続開始時の相続人の年齢)×10万円=一般障害者の控除額

<特別障害者の控除額の計算式>

 (85歳ー相続開始時の相続人の年齢)×20万円=特別障害者の控除額

この計算式で、括弧内の85歳に達するまでの年齢に1年未満の端数がある場合は、切り上げて1年としてして計算することになっています。

尚、特別障害者の対象になるのは以下の方々です。

  • 身体障害者1・2級、精神障害者保健福祉手帳1級
  • 療育(愛護)手帳1~2度(A)
  • 戦傷者手帳第1~第3項症該当となる方
  • 原爆症認定を受けている方
  • 成年被後見人の方
  • 6か月以上寝たきりで介護が必要な方

一般障害者の対象となるのは以下の方々です。

  • 身体障害者3~6級
  • 精神障害者保健福祉手帳2~3級
  • 療育(愛護)手帳3~4度(B・C)
  • 戦傷者手帳第4~第6項症該当者

扶養義務者の相続税からの控除

前項の計算式により算出した障害者控除額が、その障害者の相続税額よりも大きくなり、障害者控除額の全額が控除できない場合には、その控除できない部分はその障害者の扶養義務者の相続税額から控除することができます。扶養義務者とは、配偶者、直系血族及び兄弟姉妹のほか、3親等内の親族のうち一定の人のことをいいます。

申請手続き

相続税の障害者控除の適用を受けるためには、相続税申告書の第6表「未成年者控除・障害者控除額の計算書」を提出します。また、相続税申告書の添付書類として、障害者手帳のコピーなど障害の程度を証明する書類が必要となります。

 

今回の記事はここまでになります。