相続税対策の基本
相続税とは、亡くなった親御様の財産を相続や遺贈によって継承したときに、財産の総額が基礎控除額を上回った場合に発生する税金です。
本ブログで相続税や贈与税の紹介の中で、相続税対策に関する説明を断片的にさせて頂いてきましたが、改めてその背景となる基本的な考え方を、本記事では説明していきたいと考えています。
まず、相続税の算出式は、モデル化すると、以下のようになります。
(遺産総額-基礎控除額)× 税率 - 各種の税額控除等 = 相続税
この式から、相続税額を減少させるためには、各項目を調整することで可能となることが分かります。
具体的には、以下のような事項の調整ということになります。
(1)財産総額を減らす
(2)基礎控除額を増やす
(3)税率を低く抑える
(4)各種の税額控除等の利用を増やす
この4項目の調整はどのようなものか、さらに掘り下げて考えたいと思います。
財産総額を減らす
被相続人の財産総額を抑えるには、2つの考え方があります。
(1)財産を移転することにより、財産総額自体を減少させる
(2)相続税の評価額を抑えることにより、課税される財産総額を抑える
これを簡単に説明しましょう。
財産の移転により、財産総額自体を減少させる
被相続人が、相続人あるいは遺贈相手、生前に財産を移転することにより、相続財産自体を減らす考え方です。
代表的な方法が、暦年贈与を使って、毎年110万円ずつ財産を贈与していく方法です。この方法を使えば、10年間で1,100万円を相続税の対象外とすることができます。
しかし、暦年贈与制度は見直しされることになっており、近い将来、この方法は使うことができなくなる見込みです。
相続税の評価額を抑えることで、課税される財産総額を抑える
これは相続税の評価額と、実際の市場価格との差額を利用する考え方です。
1億円の現金の評価額は、当然のことですが1億円になります。
一方、不動産の税務上の評価額は、多くの場合、市場の不動産価格よりも低く設定されています。こうした実態を利用して、相続税対策として、相続財産をあらかじめ不動産化しておく方法も考えられます。
一時流行したタワーマンション投資は、こうした考え方を実践したものでした。(現状は税務署が対策を講じたためメリットはありませんが)
また、小規模宅地の特例により評価額を下げることも、この方法の一つと考えられます。
相続税の基礎控除額を増やす
相続税の基礎控除の計算式は以下の通りです。
3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数 = 基礎控除額
この式から、基礎控除額を増やすために、法定相続人の数を増やす方法が考えられます。
例えば養子縁組によって、法定相続人を増やすことができます。
しかし、基礎控除を計算する際の法定相続人に含められる養子の数は制限がありますので、無制限に養子を増やせる訳ではありません。
相続税の税率を抑える
相続税の税率は、財産額が大きくなるほど税率が高くなる累進課税を取っています。
前項でご説明した通り法定相続人を増やすと、相続人一人当りの課税価格が減るので、それによって累進課税を緩和することが期待できます。
また、財産総額を減らすことによっても、累進課税を緩和することが期待できます。
各種の税額控除等の利用を増やす
相続や贈与には、税額控除のほか、さまざまな非課税制度や税額軽減制度があります。
これらの制度の活用は、相続税対策において必要不可欠なものです。
しかし、これらの制度は対象を限定していたり、その他様々な条件が設定されていますので、正しい制度理解が必要になります。
まず、その制度の要件を読み解き、ご自分が対象になるかどうかの判断する必要がありますし、さらに制度利用のメリットとデメリットを比較して判断する必要があります。さらに複数の制度が利用可能であれば、制度同士の比較もしなければなりません。
例えば、相続時精算課税制度を利用すると2,500万円の控除というメリットがありますが、小規模宅地の特例が使えなくなるというデメリットがあります。
このように、それぞれの相続人がご自分の状況に応じて、どの制度を利用するのがベストなのか判断をしていく必要が出てきます。これはご自分一人で考えるのではなく、専門家のアドバイスを得ることが有効だと考えます。
今回の記事は、ここまでになります。
※「生命保険金による相続税対策とは」を参照下さい。
※「土地を利用した相続税対策とは」を参照下さい。