土地と現金の評価額の違い

大原則として知っておくべきことは、土地と現金とでは相続税の課税にあたっての評価が異なるということです。

現預金であれば、相続する金額がそのまま相続税の課税対象額となります。
1億円の現預金を相続する場合、1億円がそのまま相続財産と見なされます。つまり現預金の評価は時価の100%となります。

この場合、1億円を現金で相続すると、相続税率は30%で控除額700万円となりますので、1億円の30%にあたる3,000万円から700万円を差し引いた2,300万円が相続税となります。実効税率23%ということになります。

一方の土地の場合ですが、遺産として土地で相続すると、路線価で評価されます。一般的に路線価は、土地取引の指標となる公示地価(地価公示価格)の8割程度の価格とされています。つまり、時価(市場価格)よりも2割程度、評価額が低いということになります。現金に比較すると、土地は流動性が低いと見なされるため、評価が2割減になるとされています。

ですから簡単に言ってしまうと、時価1億円の土地の評価額は 8,000万円ということになる訳です。つまり土地の評価は時価の80%ということになります。

この他にも、土地所有には様々な優遇措置が与えられています。

建物のある土地の評価

相続する土地の上に建物が建っている場合、その建物も相続財産になります。
建物の評価額は、建築費用の60~70%程度になります。建物は時間の経過により劣化していきますし、建物があることで土地の転用性が低くなるため、「土地+建物」という組み合わせになると相続税の評価額がそれぞれ低くなります。

賃貸住宅のある土地の評価

相続する土地の上に建っている建物が、アパートやマンションなど賃貸住宅ですと、さらに評価額は低くなります。

なぜなら、賃貸契約があるということは、アパートやマンションの借主にも「その土地、建物を利用する権利」が発生するためです。それぞれ借地権と借家権と呼ばれますが、その権利の分だけ不動産所有者の権利が制限されるため、相続税の評価においてもその分が減小されるという論理です。

それぞれの評価額を計算する方法は、以下の通りの計算式になります。

【土地】自用地の評価額 ×(1 ー借地権割合×借家権割合×賃貸割合)= 賃貸住宅がある土地の相続税評価額

【建物】建物の評価額 × (1 ー 借家権割合×賃貸割合)= 賃貸住宅(建物)の相続税評価額

この計算式によって、多くの賃貸住宅では、土地と建物を合算した評価額がほぼ市場価格の半分程度まで減額されることが分かります。

小規模宅地等の特例

相続する土地が親の土地で、そこに親と一緒に住んでいる子どもがその土地を相続するという事例は、よくあることだと思います。このように同居家族同士で自分たちが住んでいる家の土地を相続する場合には、小規模宅地等の特例という優遇制度を利用することができます。

この制度を利用すると相続する土地の評価額を100坪まで8割減にできるため、高い節税効果を発揮することができます。100坪を超える広さの土地であっても100坪分までは8割減となります。

その他

土地の購入や、建物の建築のために借り入れをしていれば、その分は債務控除することができますので相続税を軽減することができます。

また、土地と生前贈与を組み合わせた様々な手法があります。

このように土地所有に関して様々な優遇措置があります。日本人の土地信仰は、こうした制度にも影響されているのかもしれません。

今回の記事は、ここまでになります。

 

※「相続税対策の基本的な考え方とは」を参照下さい。