秘密証書遺言の特徴
自筆証書遺言は、保管中に誰かに見られてしまうおそれがあります。公正証書遺言は、公証人や証人に遺言内容が知られてしまいますので、完全に遺言内容を秘密にしておくことは難しいことです。
遺言内容を生前は誰にも知られたくない場合に有効な遺言の方法として、秘密証書遺言の制度があります。
秘密証書遺言の作成の流れ
証書の作成
ご本人(遺言者)が証書を作成しますが、ご本人が自書する必要がありませんので、ご本人がパソコンなどの機器を使用して作成することもできます。
また、第三者に作成して貰うことも可能ですが、そうすると秘密証書遺言の作成目的である内容の秘密の保持に齟齬が生じるおそれがあります。
署名・捺印
ご本人(遺言者)は作成した遺言証書に、署名・捺印をしなければなりません。
封入・封印
ご本人(遺言者)は作成した証書を封筒に入れて、封印します。その際には、遺言証書に捺印したものと同じ印鑑を用います。
公証人へ遺言書の提出
ご本人(遺言者)は封印した封書を公証人に提出し、公証人と証人2人以上の前で、以下の事柄を申述します。
- 封書の中の証書が自分の遺言書であること
- 証書の筆者が誰であるのか
- ご本人の氏名、住所、職業、生年月日
公証人等による署名・捺印
公証人は封筒に、遺言証書の提出日、遺言者の申述内容を書き込みます。さらに、ご本人(遺言者)、2名以上の証人、公証人がそれぞれ署名・捺印を行います。これで秘密証書遺言が完成します。
保管
完成した秘密証書遺言は、ご本人(遺言者)が管理・保管することになります。
自筆証書遺言の場合と同様に、保管場所であるとか保管方法については慎重に検討をして下さい。
ただし、家庭裁判所の検認手続前に開封されると、その秘密証書遺言は無効となりますので、ご家族などにその旨をしっかりと伝えておく必要があります。
秘密証書遺言の有用性
秘密証書遺言は、封印されて公証人や証人が署名した封筒を、ご本人(遺言者)以外の者があえて開封しない限り、家庭裁判所の検認期日までは内容を知られることはありません。
また、公正証書遺言に比べると、費用も少額で済みます。
一方で、ご本人(遺言者)が証書を作成しますから、自筆証書遺言の場合と同様に記述が不明確であったり、複数の解釈が可能な記述となってしまう場合がありえます。
また、秘密証書遺言も公証人の関与する遺言なのですが、検認手続きが必要となります。
公正証書遺言でも、証人を守秘義務のある国家資格者にしたりすれば、これらの関係者から遺言内容が漏れることは、通常考えられません。ご本人(遺言者)の意思を適切に表現すること、それにより相続の紛争防止を考えるのであれば、公正証書遺言の方が優れていると思われます。