公正証書とは

公正証書遺言は、遺言書を公正証書として作成する方式です。

では、公正証書とは何でしょうか?

公正証書は、法務大臣に任命された公証人が作成する公文書です。公証人は裁判官や検察官など経験者から法務大臣に任命された法律の専門家です。これらは公証人法に定められています。

公正証書は法的に高い証明力を持つため、紛争予防の効果も期待できます。

公正証書遺言のメリット

法的に問題の無い遺言が作成できる

ご本人(遺言者)は法律に詳しいとは限りませんから、自筆証書遺言の場合では書き方や訂正方法を間違えて、無効となってしまうことも少なくありません。

その点、公正証書遺言の場合は、法律専門家である公証人が作成するものですから、無効となることはありません。

内容的に問題のない遺言が作成できる

自筆証書遺言は形式的に有効であっても、記述が不明確であったり、複数の解釈が可能な記述である場合があります。このような事例では、最終的に係争となることもあります。

公正証書遺言では、法律専門家である公証人が遺言者の意図や真意を確認したうえで、解釈上の疑義が残らない遺言が作成されます。また、相続物件の特定や分配方法についても誤解を生じないような表現で作成されます。

自書が困難でも作成できる

高齢や病気により、遺言書を手書きすることが困難な方がいらっしゃいます。そうしたケースでは、自書が必須である自筆証書遺言は作成することができません。

しかし、ご本人(遺言者)がご自分の意思をお話しできれるのであれば、公証人は口述の内容を筆記して公正証書遺言を作成することができます。つまり、ご本人が自書できない状況であっても遺言を作成することができます。

また言葉の不自由な方の場合でも、手話通訳者などを通じて公証人は公正証書遺言が作成することができます。

さらに公証人は病院等へ出張することもできますので、現実的な対応が可能です。

検認手続きが不要

公正証書遺言は、他の多くの遺言書と違って、家庭裁判所での検認手続きが不要です。

検認手続きには、長い場合では2ヶ月程度かかることもあります。公正証書遺言の場合は、その期間を短縮できますから、スムーズな遺言の執行ができます。

滅失、毀損、偽造、変造のおそれがない

自筆証書遺言の場合は、遺言書が発見されないこともありますし、発見されても破棄されたりすることもあります。あるいは偽造や変造される可能性も否定できません。

公正証書遺言の原本は公証役場で保存されますから、破棄や偽造・変造が行われることは考えられません。また日本公証人連合会の運営する遺言検索システムを利用して、全国の公証人の作成した公正証書遺言を検索・調査することも可能になっています。

公正証書遺言のデメリット

複雑な手続き

必要な各種資料を取り揃えた上で、公証役場での手続きが必要となるため、自筆証書遺言に比べて手続きは複雑で、時間がかかるといえます。

費用がかかる

公証役場に支払う手数料などの費用がかかりますし、専門家に依頼するとその分の費用が更にかかります。

秘密維持が困難

公正証書遺言の作成には、2名の証人が必要です。遺言の内容は証人にも伝えるため、完全秘密で遺言を作成することは難しくなります。

ただし、証人を守秘義務を有する専門家(国家資格者)にするなど、秘密を保持する方法はあります。

公正証書遺言作成の流れ

遺言内容の決定

遺産の相続方法には、特定の財産を指定して相続させる方法(特定遺贈)と、遺産のうちの割合を指定して相続させる方法(包括遺贈)とがあり、方法の選択によって遺言書の書き方も変わります。

また、誰にどの財産を相続させるかを決めるには、ご本人(遺言者)と相続人との関係であるとか相続人同士の公平性や、遺留分等のさまざまな条件を考慮する必要があります。

ご本人(遺言者)が相続方法や遺産配分などをあらかじめ決定している前提で、公証人は公正証書遺言の作成を行ういます。そのため、事前に専門家と相談してこれらの事柄を決定しておくことが必要です。

必要書類の収集

公正証書遺言の作成には、次の書類が必要です。

  • ご本人(遺言者)の印鑑登録証明書
  • ご本人の運転免許証、住基カード、公的機関の発行した顔写真入りの証明書のいずれか一つ
  • ご本人と推定相続人との続柄が分かる戸籍謄本又は戸籍全部事項証明書
  • 推定相続人の戸籍謄本
  • 財産を相続人以外の人に遺贈する場合には、その人の住民票
  • 不動産の登記事項証明書
  • 不動産の固定資産評価証明書又は固定資産税・都市計画税納税通知書中の課税明細書
  • 金融機関の通帳など銀行名や証券会社名、口座番号等が記載された資料
  • 証人予定者の名前、住所、生年月日及び職業を書面にしたもの
  • 証人の本人確認資料(運転免許証の身分証明書等)

公証役場で遺言書を作成

資料が揃ったところで、予約を取って公証役場を訪問し、公正証書遺言の作成を依頼します。

ご本人(遺言者)と公証人との打ち合わせは、通常、2~4回程度が必要になります。

公正証書遺言の作成を専門家に依頼した場合は、専門家が公証人との事前打合せを行いますので、ご本人が公証役場に出向くのは1回だけで済みます。

最終回の公証人との打ち合わせには、ご本人(遺言者)の他に2名の証人の同席が必要になります。

最終回の打ち合わせでは、公証人が作成した公正証書遺言の内容をご本人(遺言者)と証人2名読み聞かせます。耳の不自由な方には閲覧をして頂きます。遺言者と証人2名は間違いのないことを確認した上で、それぞれが遺言公正証書に署名・捺印して、公正証書遺言が完成します。所要時間は、通常は1時間程度です。

専門家に遺言公正証書の作成支援を依頼するメリット

公正証書遺言の作成のために、多くの場合、費用をかけて専門家(国家資格者)に支援を依頼します。それは以下の理由があるからです。

遺言内容についての相談

公証人との相談前に、あらかじめ相続方法や遺産配分などを決定しておく必要があります。専門家の意見やアドバイスを聞いたり質問をしたりして、ご本人の考えを整理しておくことができます。

手間を削減できる

慣れていないと戸籍謄本をはじめとする必要資料の収集もかなり負担となる作業で、時間もかかります。

こうした資料の収集や整理を専門家に依頼することにより、手間を減らすとと共に書類収集の期間を短縮することができます。

また公証役場を訪問しての打ち合わせ回数は通常2~4回程度必要になりますが、これを1回に減らすことができます。

遺言執行者になってもらえる

遺言執行者は親族を指定しても構わないのですが、親族を遺言執行者に指定しますと、それが親族間の紛争の原因となることもあります。また、遺言執行の手続きには、相応の時間と手間、専門的な知識を要する場合もあります。これらのころから、遺言執行者は専門家に依頼される例が多いようです。

遺言作成に携わった専門家は、ご本人の意図や真意を十分に理解していますので、ご本人のご要望通りの遺言執行が可能となります。

この記事は、ここまでになります。