特別方式の遺言の種類
自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言は普通方式の遺言ですが、通常はこれらの方式のいずれかにより遺言を作成しなければなりません。
しかし、特別な状況のもとで普通方式の遺言が作成できない場合に限定して、少し要件を緩和して、簡易な方式での遺言が認められています。これは特別方式の遺言とされており、以下の4種類が認められています。
死亡危急時遺言
疾病その他の事由によって死期の迫った者が行う遺言です。証人3人以上の立会いが必要となります。
伝染病隔離者の遺言
伝染病のため隔離された場所にいるときなどに認められた遺言です。収監されているときなど、一般社会と交通・通信が遮断されている状態でも認められるとされています。警察官1人及び証人1人以上の立会いが必要とされます。
在船者の遺言
船舶に乗船中に認められる遺言です。船長又は事務員1人及び証人2人以上の立会いが必要になります。
船舶遭難者の遺言
乗船していた船舶が遭難したときに、口頭でおこなう遺言です。証人2人以上の立会いが必要となります。
死亡危急時遺言の詳細
死亡危急時遺言は、特別方式の遺言の中でも利用されることが多いとされますので、この詳細を見ていきましょう。
これは、遺言者に死期が迫っており、自筆証書遺言の作成が困難であり、また公正証書遺言を作成する時間的な余裕がない場合に認められる遺言です。
死亡危急時遺言の要件
- 疾病その他の理由で死期の迫った者が、証人3人以上立ち合いのもとで、口頭で遺言の内容を述べます。
- 口述された遺言を証人の1人が書面に筆記します。
- 筆記した証人が、書面の内容をご本人(遺言者)と他の証人に読み聞かせるか閲覧させて、各証人が内容に間違いないことを承認しの上、証人全員が署名捺印を行います。
確認手続き
死亡危急時遺言は、作成後20日以内に、家庭裁判所で確認手続き(検認ではないです!)が必要になります。これは、遺言が遺言者の真意によるものかを確認する手続きです。
確認の申立てが作成後20日以上経過後に行われた場合や、家庭裁判所が遺言人の真意であるとの心証が得られない場合に、確認の申立ては却下されます。却下されると、この死亡時危急時遺言は無効になります。
ただし、確認の審判があったとしても、その死亡危急時遺言の有効性が確定する訳ではありません。真意であるとの心証を得た場合に確認の審判はなされますので、この審判に不服のある場合は、別途、民事訴訟手続きを提起することができます。
検認手続き
死亡危急時遺言は、確認の審判を受けていても、相続開始時に検認手続きを受ける必要があります。確認と検認では、それぞれの目的が異なるためです。
このように死亡危急時遺言は、遺言作成時の要件を緩和するかわりに、事後の手続きが、若干、慎重になされることになります。