付言事項

遺言の形式であるとか、法的効果のある遺言事項の範囲について、法律は厳格に定めています。

一方、遺言者には、遺産分割などの遺言内容などとは別に、遺言者の思いや考えを家族や親族などに伝えたい場合があります。このように、法的効果はないものの、遺言者の意思や気持ちを遺言に書き記した部分のことを「付言事項」といいます。

一般的には、「付言事項」は遺言書の末尾に、遺言事項と分けて記載することが多いのですが、遺言事項の中に記載することでも問題はありません

付言事項の例

公正証書遺言では、多くの場合、付言事項が記載されています。

では、どのような付言事項が多いのかご紹介しますので、ご参考にして下さい。

相続人や親族などへの感謝

家族や親族などへの感謝の言葉は、付言事項として最も多い内容です。

心情をそのままお書きになれば問題ありません。

遺言の趣旨を補足

遺言事項部分の文章に、誤解の生じないように、その趣旨を説明して、補強するためのものです。

遺言内容をどのような考えに基づいて作成したのか、あるいはその背景となる遺言者の考えを説明することにより、相続人同士の不満や紛争を予防することにも利用されます。

遺言の趣旨を補足して遺留分権利者に遺留分行使をしないよう依頼

この付言事項は、前項と同じ趣旨ですが、特に遺留分について言及しているものです。

遺言内容が遺留分侵害となる遺産分割となってしまった場合、その理由を説明し、遺留分権利者に遺留分行使を行わないように依頼する内容です。付言事項は法的な効力を持つものではないのですが、遺言者の心情を知ることにより、遺留分行使を自制するケースは少なくありません。

形見分けに関すること

遺言事項においては、家具や家電、洋服などの財産価値のあまりない品物は「その他一切の財産は〇〇に処分を一任する」などと記述して、指定した相続人に一括して処分を依頼することが一般的です。

そういった品物の中でも、遺言者の愛着のある洋服や日用品などを、特定の人にいわゆる「形見分け」として譲ることを指定しておくものです。

葬儀方法などの希望

近年では様々な葬儀方法や埋葬方法がありますので、葬儀方法や埋葬方法などに関する希望を付言事項に記述するケースも多くあります。

しかし、遺言書の開封が葬儀後であると、遺言者の希望に応えることができない場合もあります。また、付言事項はあくまで要望ですので、遺族が遺言者の希望通りの葬儀などを執り行ってくれる保証はありません。

特に、葬儀や埋葬などに強い希望がある場合には、生前に遺言書と一緒に死後事務委任契約を作成しておき、葬儀や埋葬の方法について明確にしておくことも、ひとつの手段として考えられます。