相続人の廃除の意義

「廃除」とは、ご本人(被相続人)の請求または遺言により、遺留分を有する推定相続人の相続権を剥奪する制度です。

廃除の対象となるのは、「遺留分を有する推定相続人」ですから、以下の方々になります。

・第一順位の相続人(子や孫)

・第二順位の相続人(親や祖父母)

・配偶者

第三順位の相続人は、遺留分がありませんので、廃除の対象になりません。遺留分がない相続人に対して遺産を与えたくない場合には、ご本人(被相続人)がそうした内容の遺言を作成すれば事足りるからです。

また注意点として、家庭裁判所は廃除の審判についてはかなり慎重な傾向にあることを覚えておいて下さい。そのため、廃除が認められない場合も想定して、専門家と相談して、他の手段・方法も合わせて検討されることをお勧めします。

相続人の廃除の要件

相続人の廃除が認められるのは、以下の要件がある場合に限られます。

被相続人に対して虐待・重大な侮辱を加えたとき

虐待とは、家族の共同生活関係の継続を不可能にするほど、ご本人(被相続人)に苦痛を与える行為をいいます。侮辱とは、家族の共同生活関係の継続を不可能にするほど、ご本人(被相続人)の名誉や自尊心を傷つける行為をいいます

著しい非行があったとき

著しい非行がある場合としては、酒食に溺れる、犯罪、遺棄、浪費、被相続人以外の家族との不和などがあげられます。著しい非行には、虐待侮辱とは異なり、直接、ご本人(被相続人)に向けられたもの以外も含まれます。

相続人の廃除の手続き

相続人廃除の手続き方法としては、以下の2つの方法があります。

生前廃除

ご本人(被相続人)が生前に、住所地を管轄する家庭裁判所に、審判を申し立てるものです。

制度的には、調停による合意成立の場合にも廃除は有効になるのですが、関係の破綻した相手との調停合意は考えられませんので、本記事ではあえて調停については書いていません。

相続人廃除を求める審判が家庭裁判所で確定することにより、廃除対象者は相続人としての資格を失います。

遺言廃除

ご本人(被相続人)が遺言書において、相続人廃除の意思表示を行う方法です。

遺言の効力が生じた後に、遺言執行者は遅滞なく家庭裁判所に廃除の申立てを行わなければなりません。

家庭裁判所で審判が確定することにより、廃除対象者は相続人としての資格を失います。

相続人の廃除の効果

・廃除対象者の遺留分を含む相続権が喪失します。

・生前廃除の効果は、審判の確定時に発生します

・遺言廃除の効果は、相続開始時に遡って発生します。

・被廃除者の子は、代襲相続することができます。

相続人の廃除の取り消し

ご本人(被相続人)は、いつでも廃除の取消を家庭裁判所に請求することができます。

また、ご本人(被相続人)の遺言による意思表示によっても、廃除を取り消すことができます。遺言による廃除取消しは、 遺言執行者が家庭裁判所に申し立てを行います。