家族信託の認知度は高くない

家族信託はこれまでの成年後見遺言にはない、優れた特徴を持った制度です。例えば、財産の管理から継承までを 一貫して、そして柔軟に対応することができます。

しかし、家族信託は新しい制度です。
親御様の世代の人々にとっては耳慣れない制度だと思われますから、胡散臭いと感じる方もいらっしゃると思います。本当に大丈夫なのかと、不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。

親御様はそれなりに年齢を重ねていらっしゃると思いますが、まだまだお元気で、子どもの世話にはなりたくないという自負を持っていらっしゃるかもしれ ません。

そうした親御様は、今すぐに、大きな財産を子供に任せるのは心配だと思われるかもしれません。このような場合に、親御様の全ての財産を家族信託に託すことを相談すると、親御様からの反発を招きかねません。

小さく家族信託を始める

こうした場合には、家族信託を少額の財産で開始するのはいかがでしょうか。
例えば、親御様の日常生活に使用する金銭100万円を家族信託として、お子様が管理をするようなことです。お子様が、親御様の支払いを代行できれば、親御様にとっても便利ではないでしょうか。
まずは、親御様に家族信託を体験して頂き、仕組みやメリットをご理解して頂く 時間を設けるという考え方です。

そして、親御様に家族信託を経験していただいて、納得していただいたとき。あ るいは、親御様が衰えを自覚されるようになり、将来に不安を覚えるようになっ たとき。
こうしたときに、少額で始めた家族信託に、自宅不動産など大きな財産を簡単に追加することができます。

こうした信託への財産追加は、最初に開始した家族信託契約書に、不動産や金銭を追加できることを定めた条文をあらかじめ組み込んでおくことにより実現でき ます。これを信託追加といいます。

このように信託契約に信託追加の機能をあらかじめ組み込んでおくことで、親御様がご納得されたときに、財産を家族信託に追加して頂けます。

また、時間をかけて段階を踏んでいくことで、親御様以外のご家族や親族の理解 も得られやすくなるのではないかと思います。

追加信託とは

追加信託とは、当初は信託契約に組み込まなかった財産を、家族信託に追加する 方法のことです。

ただし、追加信託を実行するためには、親御様(委託者)とお子様(受託者)の 合意が必要なため、親御様の判断能力があるうちに行う必要があります。
しかし、家族信託契約の締結に比べると、追加信託の合意書はシンプルですの で、若干程度であれば判断能力が衰えた状態でも有効になると考えられます。

親御様(委託者)とお子様(受託者)の合意により追加信託をすることができる のですが、実務では、追加信託する方法を明確にするため、信託契約書の条文に具体的に追加信託する方法を定めておきます。追加信託を行うときは、信託契約書記載の方法に従い信託財産の追加を行います。

信託契約書の条文に記述しておくことで、金銭の追加信託は、金銭を信託口口座 に振込手続をするだけで完了することも可能です。
不動産を追加信託するには、親御様(委託者)とお子様(受託者)の合意文書の 作成を条件とすることが一般的です。ただし、文書といっても、紙1枚の簡易な ものでも問題ありませんから、あまり手間はかかりません。

この記事は、ここまでになります。