※ 本記事は「遺産分割協議書とは」の続編になります。

遺産分割の方法

遺産分割協議は全ての相続人による合意により成立しますが、その前提となる遺産分割方法については幾つかの代表的なものがあります。各家庭あるいは各相続人の都合により、分割方法を選択することが可能ですので、以下でご説明していきます。

現物分割

現物分割の概要

現物分割とは、遺産の形態を変えることなく、そのまま相続人に配分する方法のことです。例えば、自宅不動産を配偶者に、株式は長男に、それぞれ取得させるような分割方法です。

一般の人が通常想像するような一般的な分割方法が現物分割で、実際にほとんどのケースでは現物分割によって遺産分割が行われています。

また、一筆の土地を、以下のように複数に分筆して各相続人に取得させる遺産分割も現物分割に当たります。

現物分割による遺産分割を行うと、「各相続人の相続分」と「分割結果」が微妙に異なることがよくあります。例えば、配偶者の相続分が50%だとしても、分割結果は55%になってしまうようなことですが、不動産が含まれる場合では、精密な遺産分割を行うことが困難なため、こうしたことがおこります。

このように各相続人の「相続分」と「分割結果」が異なる場合であっても、相続人全員が合意すれば遺産分割協議は成立しますので、問題にはなりません。

しかし、現物分割による方法で相続人全員の合意が取れない場合は、以下に説明する「代償分割」や「換価分割」が検討されることになります。

現物分割の注意点

土地の分筆による分割をおこなう場合は、法令による制限を意識した分割を行わないと、その後の利用に制限がかかることがありますので、注意が必要です。

また、借地権の相続の場合では、1人の相続人が単独で取得する場合は、地主(賃貸人)の許可は必要ありませんが、複数の相続人が借地権を取得する場合は地主(賃貸人)の許可が必要になりますので、これも注意が必要です。

代償分割

代償分割の概要

代償分割とは、遺産の現物を特定の相続人に取得させて、現物を取得しなかった他の相続人に対する債務を、その取得相続人に負担させる分割方式です。

例えば、法定相続分通りに遺産分割すると合意した場合に、法定相続分よりも多く相続する人から、少なく相続する人に対して、法定相続分との差額分を支払うことで解決する方法です。

この場合は、相続人同士の合意があれば、現金で支払ってもよいですし、取得相続人の所有する動産・不動産などの資産を提供することでも構いません。

代償分割の注意点

特に、代償として取得相続人所有の不動産を提供する場合ですが、相続税の計算が少し複雑になりますし、別途に譲渡所得税が課税されたりすることもありますので、税理士等の専門家と協議されることをお勧めします。

換価分割

換価分割の概要

換価分割とは、遺産を金銭に換えてから、その金銭を分割する方法です。

現物分割ができない場合や、現物分割をすることによって著しく価値が落ちてしまう場合などに行われる方法です。

また、相続分の比率を調整する目的で、部分的に利用される場合もあります。例えば、1部の遺産を現物分割し、残った遺産を売却して金銭に換えて、現物分割で発生した相続分の過不足を調整するような場合です。

換価分割の注意点

遺産を金銭に換える必要がありますが、どの位の金額で売却できるか不透明ですし、相続税納付期限と売却期限との兼ね合いなども考えないといけません。

後々、相続人同士での争いを未然に防ぐためにも、以下のような事項について事前に合意しておくことをお勧めします。。

・最低売却金額

・売却期限、換金期限

・売却担当者(相続人)

・売却担当者の報告義務

・担当者以外の相続人の協力義務

・諸費用の額、負担方法

・売却が不成功の場合の対処方針