相続人確定の重要性

遺産分割の協議を行う場合には、必ず共同相続人全員が参加する必要があります。一人でも不参加者がいれば、その遺産分割協議は無効となってしまいます。したがって相続人を確定することは大変重要です。

これまでも説明してまいりましたが、第一順位の相続人は子であり、第二順位は直系尊属、第三順位は兄弟姉妹となっています。そして、これらの血族相続人とは別に、被相続人の配偶者は常に相続人となります。

今回は、相続人についてより詳細に見ていきたいと思います。

第一順位の相続人

第一順位の相続人は、ご本人(被相続人)の直系卑属である子や孫などです。

胎児

子には、出産前の胎児も含まれます。

多くの場合、母も相続権を有しますので、胎児と法律的には利益相反する関係になります。そのため、胎児の権利保護のために特別代理人を選任することが必要になります。

胎児が死産の場合には、相続人が変動するため遺産分割協議のやり直しが必要となる場合もありますのので、実務として遺産分割協議は胎児の出生を待って行うことをお勧めします。

嫡出子と非嫡出子

婚姻関係にある夫婦の間に生まれた子を嫡出子とし、そうでない子を非嫡出子といいます。

かつては非嫡出子の法定相続分は、嫡出子の2分の1でしたが、平成13年以降に相続開始した事案では非嫡出子と嫡出子の相続分は平等に取り扱われることになりました。

養子

養子は、養子縁組によって養親の嫡出子の身分を取得しますので、養親の相続人となります。また一方で、実親の相続人でもあります。

ただし特別養子の場合には、養子と実方の血族との関係を終了させるため、実親の相続人となることはありません。

代襲相続

相続開始前に子が死亡していたり、相続欠格および廃除によって相続権を失っているときは、その人の子(つまり孫)が代襲相続人となります。代襲相続人の孫が死亡しているなどのときは、再代襲相続がおこなわれ曾孫が相続人となります。

しかし、子が相続放棄した相続権を失った場合は代襲原因になりませんので、その人の子(孫)は相続人にはなりません。

親と子が同一事故で死亡した場合には、相続の開始「以前」ということになりますので、代襲相続が生じることになります。

また、代襲相続人になる人は、ご本人(被相続人)の直系卑属でなければなりません。例えば、ご本人の子が養子であって、その養子に養子縁組前の子がある場合には、その養子の子とご本人とは血族関係を生じませんから、直系卑属にならないため、代襲相続人にはなれないことになります。

第二順位の相続人

第二順位の相続人は、ご本人(被相続人)の直系尊属である父母や祖父母などです。

第一順位の相続人である子とその代襲相続人がいない場合、あるいは子や孫がいてもその全員が相続放棄をすると、第二順位である父母や祖父母、曾祖父母が相続人になります。

法律では実親と養親を区別していませんので、ご本人(被相続人)が養子である場合、その実父母と養父母の双方ともに相続人になります。

直系尊属のなかでは、親等の近い人が先に相続人になります。ですから、父母のいる場合は父母が相続人になり、父母の両方がいない場合に祖父母が相続人になります。

第三順位の相続人

第三順位の相続人は、ご本人(被相続人)の兄弟姉妹です。

第一順位および第2順位の相続人がいない、あるいは、いてもその全員が相続放棄をすると、ご本人(被相続人)の兄弟姉妹が相続人となります。

兄弟姉妹の中には、父母の両方を同じくする兄弟姉妹(全血の兄弟姉妹といいます)と、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹(半血の兄弟姉妹といいます)があります。この場合、半血の兄弟姉妹の法定相続分は、全血の兄弟姉妹の2分の1になります。

兄弟姉妹の場合も代襲相続は認められていますが、再代襲は認められていません。したがって、ご本人の甥および姪までが相続人になります。

配偶者

婚姻の届出がされているご本人(被相続人)の夫または妻は、第一順位から第三順位の血族相続人と同時に、配偶者として常に相続人になります。

一方で、婚姻届が出されていないが社会的に正当な婚姻と評価されている夫婦関係を内縁関係といいますが、このような内縁の夫または妻は相続人となることができません。

また、一部の自治体では同性婚の証明書を発行していますが、このようなケースの配偶者も相続人となることができません。

ですから、内縁関係や同性婚などの場合に、配偶者に財産を残したい場合は、遺贈する旨の遺言を作成しておく必要があります。